貴志祐介・小説レビュー「悪の教典(上)」

こんにちは!

貴志祐介さんの「悪の教典(上)」の感想です。
うちの学校には,怪物がいる。学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は高いIQと好青年の貌を持っていた。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー。
ピカレスクロマンというのは犯罪を犯す側の人物が読者の共感を許す作品です。義賊やおしゃれな怪盗,残虐な犯罪者を冷徹に描いたような小説はピカレスクロマンとは呼ばないようです。「ピカロ:グスマン・デ・アルファラーチェの生涯」というピカロ(picaro)を主人公とする小説の様式から来ています。

マック・ザ・ナイフ」というオペラの曲の,あの軽快な曲の口笛とともに,人を殺し続けるお話です。

生徒からは「ハスミン」とニックネームで呼ばれ,女子生徒の憧れ,問題が起きると先生達からも相談を受けるほど信頼を得ている英語教師。彼のさわやかな風貌にかすかに違和感を感じる人もいるけれど,それを感じ取られたらアウト。

スピーディーに進みます!主人公は残虐で狡猾ですが,そのあたりの描写は軽めにされていました。彼には“感情”というものが著しく欠如(正確には他人の感情に共感する気持ちがない)しているので,殺人という行為自体にはなんら躊躇や葛藤というものはありません。
彼も目線で描かれており,彼の感覚ではそれが当たり前として描かれているところがとても怖く感じました。

彼の過去や背景,舞台学校関係者たちの抱えているもの,そういったものが物語が進むにつれ,どれもこれもダークなものなのですが,明らかになっていくのもおもしろいです!

主人公の狡猾ぶりも目を見張るものがあり,テンポが良く読みやすい作品です。

それでは!