小説・貴志祐介「新世界より(中)」〜レビュー〜

貴志祐介さんの「新世界より(中)」の感想です。

恐怖とは内から芽ぐむ。人間の心から出た膿が,社会を,自らを異形化させる。中巻の帯紹介です。少しずつ謎が解き明かされてゆくのですが,新たな謎も出てきます。一人また一人と消えてゆく友人たち,大人に管理される子供たち,その世界の終わりでどんな惨劇が待ち構えるのか。

早季たちも中学生の年代になり,心身共に大人へと変わりはじめています。ミノシロモドキからの知識が少しずつ実例によって補完されていく様には恐怖を覚えます。綺麗なものほど,恐ろしいですね。

子どもたちは厳重に監視され,少しでも攻撃的であったり,自己コントロールを欠くような兆候があれば消されてしまいます。それがなぜなのか,理由と子供たちを恐怖の目で見守っている大人たちの奇妙で怖い世界観が出ています。

「業魔」や八丁標の正体が明かされますが,その時のすばるが愛おしいですね。
1班のみんなが彼のことを少しでも記憶の隅に覚えてたことが嬉しかったです。

中巻では悪鬼と業魔についての実例をだし,それにより早季たちが抱く不信感。そして,ある警告によって,今後の展開も気になる終わり方でした。悪鬼と業魔とは違った意味で,大人たちや社会を作った人達からの歪んだ思想を垣間見ました。

それでは!