貴志祐介・小説レビュー「悪の教典(下)」

こんにちは!

貴志祐介さんの「悪の教典(下)」の感想です(*´−`*)ノ

俺には感情がないらしいんだ。高校を襲う,血塗られた恐怖の一夜。極限状態での生への渇望が魂を貪りつくしていく。風雲急をつげる超弩級のエンタテインメント。

真相に手が届きつつあった生徒をハスミンが殺害していきます。一人一人だったものがついには大量殺人になっていきます。
木の葉を隠すなら森の中,死体を隠すなら死体の山を築けばいいという理屈の元,二人殺しても死刑なら,全部殺して隠蔽を隠そうと企みます。

ハスミンは教師という職業を前面に立てたキャラとなっていますね。殺人時も性行為時も英語教師という振る舞いをしています。様々な事柄を教育論に引っ掛けて描いていますね。本気半分冗談半分気分ではあるのですが。それが一層殺人を怖くしている要素になっています。

屋上から突き落とされていた安原美彌を生かしておいた作者の意図はなんなのでしょうか。ハスミンが無意識下ではちゃんと良心があり,その良心があったおかげで美彌を殺さずにすんだのかと考えたのは,落とす前の意図ですよね。
唯一の救いとして生きていたのでしょうか。それでもまだハスミンに心酔している美彌を見ていると,ハスミンの心に残る恐怖を見た感じがしました。【人心掌握術】【洞察力】【コミュニケーション能力】【問題解決能力】【行動力】【異性を惹き付ける魅力】なども使い方によってはこのようにもできてしまうという一面を見ました。

ハスミンは結局あっさり捕まってしまいますが,あれだけ優秀なハスミンがAEDの録音によって捕まってしまうのはあっけないですね。もうちょっとひねったアイディアのほうがよかったです。

生き残ったのは伶花と雄一郎ですが,さすがに思考能力も残っていなかったのか,避難用袋で,死体を流すというトリックで助かりました。モンティ・ホール問題を応用したというのは面白いですね。
ハスミンは生徒達が悪魔,神の声が聞こえるなど,精神疾患者を装いはじめ,新しいゲームを始めています。それによって,最後に怜花は,いつか社会に戻ってくかもしれないハスミンにはやくも恐怖感を抱いています。

ここまで一作の中で一人の人間が大人数の人間を殺す話も少ないのではないでしょうか。生徒の逆襲を心の中で応援しつつも,ハスミンがどのように殺していくのかを考えながら読み進め,予想を裏切らないように見せかけつつ,いかに裏切っていくのかというところをとても楽しく描けている作品でした。

それでは!